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徳島ラーメン大全集【地元の放送局が取材した人気店まとめ】
2024年04月23日(火)

春陽軒「中華そば 肉玉子入り」(徳島市北矢三町)

春陽軒「中華そば 肉玉子入り」(徳島市北矢三町)

かつて徳島ラーメン界にその名を轟かせた名店が復活。

豚骨と鶏ガラを12時間かけて煮込み、濃いめの醤油だれを合わせたスッキリ味のスープ。
そのスープが染みた豚バラ肉、そして端切れの良い中細ストレート麺。その味は(閉店から)2年半経っても変わらない。
取材先名 春陽軒
住所 徳島市北矢三町2-6-42
営業時間 11:00~19:00 
※なくなり次第終了
定休日 火曜

※掲載されている内容は、放送日時点での情報です

取材時の様子

30年近く愛されてきた、ある徳島ラーメンの名店が、2021年末、惜しまれながら閉店しました。そのお店「春陽軒」が2024年4月17日、新たに店を構え復活オープンしました。再出発の裏にあったのは家族の絆の物語でした。

徳島市北矢三町、徳島科学技術高校の脇を入って住宅街を300mほど走ります。現れたのは花輪がついた真新しい店舗。看板には懐かしい「春陽軒」の文字。4月17日、かつて徳島ラーメン界にその名を轟かせた名店が復活オープンしました。そして、名店復活の裏には知られざる家族の物語があったのです。

春陽軒は1993年、徳島市南田宮 JRの高架沿いに店を構えました。2001年には2代目店主の近藤孝さんが脱サラして、母のハルエさんから店を受け継ぎました。しかし、茶系徳島ラーメンの代表格とまで言われた春陽軒は2021年末、突如その暖簾を降ろします。理由は近藤さん夫婦の過労による体調不良でした。

(春陽軒 近藤孝 店主(68))
「非常に苦しい決断だったんですけど、妻と相談して、この際 身を引いてリタイアして」

スープの仕込みは朝の3時から。息子を含む親子3人で店を切り盛りしていた近藤さんですが、睡眠時間3時間という生活が20年余り続き、体が悲鳴を上げました。

(近藤孝 店主(68))
「母親からも私が脱サラする時に「こんな仕事大変だからやめときな」と言われたんですよ。やったらえらい(しんどい)、大変な労力がいります。夜中からずっと晩までってことで」

そんな大変な仕事をどうして再開することになったのか?きっかけは近藤さんの娘婿・新井勝晴さんでした。

(近藤さんの娘婿 新井勝晴さん(39))
「『もう本当に春陽軒はしないの?』っていう風に、あまりにも日が経ってもよく訊かれるんで、これはやっぱり求められてる味だったんだなっていうのが分かってきて。もし僕が入ることによって春陽軒が残るんだったら、残したいなと思いながら」

新井さんは会社員をやめ、近藤さんに弟子入りを志願します。こうして新たな戦力を得た春陽軒は、家族5人で再びその暖簾を上げました。

復活オープン当日、お店の前には長蛇の列ができました。

(客)
「楽しみに来たけんね、今日は。前の味が食べられると思って」
「城北(高校)通っている時から、学校の帰りとかよく寄っていたので、もう体の一部かなと思って。青春の味なんで」

(近藤孝 店主(68))
「2年と4カ月ぐらい待たせましたけど、今日新規オープンするのでよろしくお願いいたします」

オープンと同時に広い店内は満席に。湯気の向こうにお客さんの笑顔が溢れます。もちろん厨房はいきなり戦場です。新井さんも早速スタッフとしてフル回転です。

中華そば 肉玉子入り(小)。常連客の思い出の味だ。

(客)
「この味ですね」
「(青春の味を)思い出しました。良かったです。また来ます」

麺を湯で、スープと絡め、具材を乗せていく。近藤さん親子3人は、この場所に帰ってきた喜びをしみじみと噛みしめていました。今日から加わった娘婿の新井さんも、戸惑いながら少しでも厨房の戦力になろうと必死です。

(新井勝晴さん(39))
「焦ってしまって、できる時とできない時とがあった。幸い家族に恵まれ、みんな注意配って見てくれている」

(客)
「2歳の時からです。小1人前をペロっと食べていた。やっぱり僕の一番の思い出の味が、この春陽軒さんのラーメンですね」

人生のいろんな思い出が詰まったこの味。まさか、また食べられるとは。
初日は200食以上を用意していましたが、わずか3時間で売り切れました。

(近藤店主の妻 玲子さん(65))
「憶えてくれとん?と言ってくれて……なんかね、涙 流してくれて。こっちも泣きそうになった」

再出発の背中を押してくれた新井さん。スタッフとしてはまだまだですが、自らも脱サラして店に入った経験を持つ近藤店主は。

(近藤孝 店主(68))
「私でも久しぶりでなかなか大変だった。やっぱり何日かはかかるかなと思います。
私も先代のもとで苦労したんで。でも厳しいところは厳しく、柔らかいところは柔らかく進めて行こうと思っていますね」

(新井勝晴さん(39))
「ありがたい。今まで通り皆さんが『また春陽軒食べに行きたい』という店なのがすごいと思うので、そのお店を残し続けたい」

家族の絆で成し遂げた再出発。これからもお客さんの笑顔のために最高の一杯を作り続けます。復活の春、陽はまた昇りました。
(動画でもご覧いただけます)